ブラウンの熊さんたち

by yasukawa

 

先週の金曜日は、ブラウン大学にいる日本人学生の方数人(ブラウンの熊たち)と会う機会がありました。ブラウン大学の授業の話や、学生さん達の関心事について、色々とお話を伺いましたが、印象的だったのは、彼らが毎年日本で開催している米国留学説明会についてです。クラウドファンディングで資金を集め、日本の色々な都市をまわり、米国への留学に興味のある高校生を対象に説明会を開いているそうです。その様子は、youtubeでも見ることができます (米国学部留学説明会)。鬱屈した気持ちで、のんべんだらりと過ごしていた自分の学生時代とは大違いです。

 

日本から米国へ留学する留学生は減少しているとよくいわれます。実際に、Institute of International Educationのデータをみてみると、米国への留学生の数は、10年前の約半分になっています。少子化による留学する年齢層の減少を考慮しても、たしかに米国へ留学する人の割合は減っているのでしょう。

図1) 米国への日本人留学生数の推移 Open Doors dataの数字をグラフ化

日本の政府はこうした留学生の減少を懸念し、グローバル人材育成のために、2020年までに海外への留学生の数を倍増する計画を打ち出しています(2015年度現在その効果はあまり出ていないように思われますが)。私は、若い人は皆留学した方が良い、とは思いません。日本にいながらでも、腐るほどたくさんある語学教材を使って英語を学び、itunes Uでハーバード大学やMITの講義を受けられる現在、留学しなければ得られないものは、過去に比べ少なくなってきているように思います。それでも、日本という比較的均一で、居心地の良い社会から離れ、異質な環境と人達の中に身をおくことでしか感じられないこと、知り得ないことがあると思います。かくいう私も、大学留学ではありませんが、医師として米国に留学に来た一人です。留学する理由を日本の人から聞かれた時、「米国でしか学べない医学を学びたい」(本当は米国でしか学べない医学などほとんどないと知りつつ)などと、その人が納得してくれるような、分かり易い説明をしていたように思います。日本の外に出た本当の理由は、おそらく別のところにあり、『印度放浪』の著者藤原新也がインドへ行った理由に近い気がします。


「・・・何か知らんけど(中略)、負けに行ったんじゃないかなァ。」(『印度放浪』十五年目の自白)


日本の外に出て、「負ける」。そういう経験をした人が、どれくらいかは分かりませんが一定以上いたほうが、日本という国の健全さが保たれるように思います。今の日本を見ていると、特にそう感じてしまいます。